どんどん利用者に近くなっていくコンピュータとソフトウェア、人間の3cmの距離にまで近づいたメガネ型コンピュータから更に近づくと、必然的に人体に内臓として内蔵するコンピュータへと向かいます。内臓型コンピュータというと生々しいので、インプラントコンピュータというのが良さそう。(内臓とは、体内にある隙間を意味する体腔にある器官をいうとのこと)
気持ち悪さや怖さを感じるかもしれませんが、すでに人間は様々な人工の内臓物を使っています。一般に最も普及しているものは、コンタクトレンズ、次いで、差し歯や入れ歯や歯の治療用の被せ物やインプラント、ペースメーカー、人間用はまだですがペット用のICチップが挙げられます。
先日、シリコンバレーを生み出したスタンフォード大学の研究チームが、原子の大きさの4つ分という極小サイズのCNT(カーボン・ナノ・チューブ)を使ったトランジスタを組み合わせ、コンピュータができたことを発表しました。シリコンによる省電力化、高速化、小型化が限界が見えてきた中、ポストシリコンの素材として期待大です。
省電力、高速化、小型化この中で最も重要なのが省電力です。十分に低い電力で動作すれば、体内にあるエネルギーを使ったり、腕時計のように体の動きから発電したエネルギーで動作させることが可能です。小型化は、省電力化とセットで進みます。高速化はどんなに遅くとも、正確に動くコンピュータは人間といい補完関係にあるのでまずは問題ないでしょうし、競争的に次々と進化していくでしょう。
インプラントコンピュータは大きく2つに分類できます。1つは既存のコンピュータの延長、例えば、手の甲にタッチスイッチをつけ、コンピュータからの応答は音として聞こえるなど、比較的イメージしやすいものです。もう1つは脳と直結させ、人体側を拡張するインプラントコンピュータです。脳波necomimiなど、脳波を使ったおもちゃの登場もありますが、脳波の最大の敵はノイズであり、実は内蔵してしまうと意外と簡単に扱えたりします。
脳の一部を失っても、残りの部分が補うように自動的に修復させたり、人間の脳は非常に柔軟です。きっと、新しく接続された脳拡張型インプラントコンピュータをきっとうまく使いこなしてくれることでしょう。その状態のままWebに、つまり、全人類とシームレスに接続してしまうと、人間の個としての境界がなくなってしまうので、まずは2種類のインプラントコンピュータが、それぞれ独自に進化することになるでしょう。1989年に発表された攻殻機動隊な世界に、いよいよ現実が追いついてきます。
現代のスマホ、電脳メガネもその先の未来の一部を実現するデバイスなので、インプラントコンピュータ、コンピュータが消えた世界でのアイデアソン、おもしろそうな気がします。
参考リンク
- 世界初の「カーボンナノチューブコンピューター」製作に成功、実動作も - GIGAZINE
- 指と耳が秘密のスピーカーになる「以心伝心」:ディズニーが開発 « WIRED.jp
- ヘンリー・マークラムがスーパーコンピュータの中に脳を構築 | Video on TED.com
- Stanford scientists create world's first carbon nanotube computer | The Verge