2014-10-01
2004/10/1に発表、発売開始した「jigブラウザ」。docomo FOMA900シリーズとau WINシリーズに対応した世界初の携帯電話向けダウンロード型フルブラウザのプレスリリースは、ヤフトピに掲載されるなど大きく採り上げていただいた。今日はその日から丸10年。現在も多くの人にお使いいただいているjigブラウザのビジネス面を紹介する。(iモード、WIN向けに、フルブラウザ登場~jig - ITmedia Mobile

フルブラウザに対するフルではないブラウザとは日本独自のモバイルWebのみに対応した携帯電話用のブラウザである。jigブラウザ発表時の2004年、i-modeを筆頭とする日本独自仕様のモバイル向けのWebが活況。有料課金を前提とし、携帯電話会社からのアクセス以外を遮断するなど、オープンなWebとは異なる仕組みは、かつてのキャプテンに近い。当時の携帯電話に搭載された日本独自仕様のブラウザで、一般のWebサイトを見ようとしてもサイズオーバーや、仕様が異なるために見ることができない。この制限されたブラウザに対して、生まれた言葉がフルブラウザである。

携帯電話向けの通信料金の定額制のスタートが大きな転換点となる。時間ではなく通信量で従量課金されたそれまでの料金体系から、月額定額料金を払えば使い放題になるこのプランは、パソコン環境がブロードバンド化するに匹敵。携帯電話故に、いつでもどこでも好きなだけインターネットする素地が整ったことで、パソコンと同様の一般のWebサイトを見るニーズが高まった。・・・というか、自分がすごく欲しかった。

そこで作ったのが「jigブラウザ」。Webサイトを形作る、HTMLを解釈し表示する部分を非力なケータイをサーバーで補う、今で言うクラウド型のブラウザとして実装。スクロールやブックマークなどの早いレスポンスが必要なインターフェイスはケータイ用アプリとして実装。東京からの帰りの新幹線、一番のネックだったブラウザの核、レンダリングエンジンを出来たうれしさと、見せたメンバーの薄い反応が懐かしい。

仕上がりつつあった「jigブラウザ」を、jig.jp共同創業者の岸はプレステのソフトと同様、5,800円で売ろうと言う。しかも、年額。携帯電話用のコンテンツで税込みで6,000円オーバーとは前代未聞。お試し用として、月額1,000円プランも用意する形で迎えた2004年10月1日。高額なこともあってまずは限定的と予想していた利用者数を大きく上回るアクセスにより、サーバーの許容量を一夜にして超過。クラウド時代の今と違って、サーバー準備に1〜2週間待っていただく事態となる。

一般の利用者に直接ソフトウェアを提供する「B2Cサービス」をやる。これが、jig.jp創業の根底にある。利用者からの届く意見を元に、アプリをバージョンアップすることで応えるという、コミュニケーションが実現。jigブラウザを使ってくれている方たちのバージョンアップに対する反応がうれしかった。タブ、RSS、アプリを使わないWeb版、プラグイン、メーラー、スケジューラー、JavaScript対応、動画対応、シンプルバージョンとハードウェアや、利用者のニーズと共に変化してきた10年間。ちなみに、当時最も参考になったメディアは、2ちゃんねるだった。

10年続いた、課金というビジネスモデル。ケータイサイトを持たないメディアの方に、jigブラウザを紹介するパートナーとなってもらった。月額1,000円のお試しプランは、早々に月額600円(税別)へと見直し、利用プランの主流に据えた。支払い方法を、開始当時には非対応だった携帯電話料金と一緒に支払う、キャリア決済に後に対応できたことは大きい。携帯電話でその場で簡単に買うという、今日のスマホでのアプリ購入に通じるこの文化、i-mode発祥、日本発祥である。

Yahoo!Japanとの取り組みは、利用者ニーズともうまく合致。Yahoo!モバイルで検索するユーザーに、圧倒的に情報量の多いパソコンサイトの検索結果をjigブラウザWebを使って提供する。jigブラウザWebとは、アプリを使わず、ケータイのブラウザ用にパソコンサイトを分割変換するサービスで、Java版非対応のauユーザーからの要望を元に作ったもの。変換され表示する各ページのヘッダーやフッターに、もっと見やすく見るには「jigブラウザ」と紹介している。(スマホのように表示で紹介している例、右図)

ケータイサイトという言葉を聞かなくなって久しい2014年。Yahoo!モバイルからケータイサイトの検索結果が消えた。jigブラウザは、役目を終えた携帯電話向けのサイトに変わって、60%の日本の携帯電話利用者とWebとをつなぐ。

ガラパゴス+ケータイ、ガラケー。iPhone、Androidへと文化として継承されているからこそ、商業的な失敗が日本として痛い。GPSを始めモバイル特有の新しい仕様を、W3C標準として提案し続け、同時に、キャリア決済と携帯電話販売というエコシステム自体を輸出していくことができれば、iPhone独壇場は無かったかもしれない。

スマホ時代のjigブラウザとは何か?ヒントを求めて入ったW3Cで出会ったオープンデータ。政府オープンデータサイト、DATA GO JP も本日、本格運用を開始。次のWeb、セマンティックWebの本格到来というチャンス、新しい10年を作ります!


メガネの日でもある、10/1。jig.jp本店を構える、メガネをかけたビル、めがね会館。ちょうど30年を迎え、シンボルであるメガネの看板をリニューアル。うれしい、jigブラウザ誕生日プレゼント!。
Facebook 鯖江市長投稿より、福井新聞社提供めがね会館看板リニューアルを伝える記事

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